難治性皮膚疾患の治療に期待
公益財団法人東京都医学総合研究所・村上誠参事研究員、山本圭研究員らは、脂質を分解する酵素の研究から、皮膚の健康と病気を調節する新しい脂質メカニズムを発見した。
背景
外界に接する皮膚表面の表皮角化細胞(ケラチノサイト)は脂質(特にセラミド)の層を作り、体内からの水分の蒸散又は病原体などの侵入から体を守っている。表皮角化細胞は日々分化と増殖を行っているが、このサイクルが壊れると皮膚のバリアが乱れ、アレルギーにつながる。
このように表皮角化細胞が作り出す脂質は、皮膚にとって非常に大切な生体成分だが、セラミド以外の脂質が皮膚でどのような役割をしているかについては十分理解されていなかった。
研究成果
村上研究員らは、細胞外に分泌されるリン脂質分解酵素(PLA2G2F・分泌性ホスホリパーゼA2の一種)が表皮にのみ強く発現していることをつきとめ、表皮の肥厚をさらに悪化させていることを見いだした。
また、PLA2G2Fが表皮のリン脂質に作用し、ドコサヘキサエン酸(DHA)を持つエーテル型リン脂質(プラズマロージェン型)を、リゾ型に変換していることを発見した。さらに、このリゾ型リン脂質(P-LPE)は、乾癬やかぶれの新規バイオマーカーであると同時に、新しい生理活性脂質であることが明らかとなった。
今回の研究より、PLA2G2Fが皮膚にのみ発現していることを考えると、PLA2G2Fやリゾ型リン脂質を標的とした創薬は、乾癬や皮膚癌などの治りにくい皮膚疾患に対して新規の予防・治療法の開発につながることが期待できる。
(画像はプレスリリースより)

科学技術振興機構(JST) プレスリリース
(共同発表)
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20151013/index.html東京都医学総合研究所 ホームページ
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