慢性炎症性貧血 薬剤開発に期待
東京大学大学院理学系研究科・濡木理教授らの研究グループは、細胞から血中への鉄イオンの排出を担っている、鉄排出輸送体フェロポルチンの細菌由来相同タンパク質が、2状態の立体構造を持つことを明らかにし、フェロポルチンがその2つの状態を行き来することで、鉄イオンを輸送が行われていることを明らかにした。
背景
鉄イオンは生体内での酸素の運搬や、様々な酵素反応に不可欠な、必須栄養素であり、細胞への取り込みと細胞からの排出は厳密に制御される必要がある。
フェロポルチンは生体内の鉄イオン量の調節に不可欠なタンパク質であり、生理的にも、薬剤開発にとっても重要な意義を持つ輸送体だが、分子構造や機能についての知見は乏しく、鉄イオンの排出機構や、ヘプシジンによるフェロポルチンの機能抑制機構の詳細は不明だった。
研究成果
研究グループは、細菌Bdellovibrio bacteriovorus由来のフェロポルチン相同タンパク質であるBbFPNについてX線結晶構造解析を行い、BbFPNの立体構造を2つの異なる状態で決定することに成功した。
BbFPNの立体構造に基づき、フェロポルチンがどのように構造を変化させて鉄イオンを運んでいるかが明らかとなった。加えて、フェロポルチンの機能を抑制するペプチドホルモンである、ヘプシジンの作用機構の推定にも成功した。
今回の研究の成果は、鉄排出輸送体フェロポルチンの分子構造と鉄イオン排出制御機構についての理解を大きく進めることになる。
また、慢性炎症性貧血により、ヘプシジンの過剰な産生が起こりフェロポルチンの機能が抑制され、結果的に血中の鉄イオンが欠乏し貧血症状を引き起こす。今後の研究により、ヘプシジン・フェロポルチン経路を標的とする薬剤の開発が進展していくと期待される。
(画像はプレスリリースより)

東京大学 プレスリリース
<a href=" http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/9945/" target="_blank"> http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/9945/</a>