創薬研究に朗報
筑波大学生命環境系・王碧昭教授、野口隆明大学院生(日本学術振興会特別研究員)、及び産業技術総合研究所・栗崎晃上席主任研究員の研究グループは、マウスES細胞を用い、試験管内での培養のみで、立体的かつ胃の機能の一部を担う胃組織の作製方法を開発した。
研究内容
今回の研究では、胎生期の胃の元になる部分に着目し、胃の原基で発現する遺伝子Barx1、Sox2を指標として、ES細胞から効率良く胃の原基構造を分化誘導できる培養条件を同定した。
また、この胃の原基構造を3次元培養することで、マウス新生児に見られる胃線と類似の構造を持つ、立体的な胃組織の作製に成功した。作製した胃組織内の胃線では、消化酵素を溜め込んだ主細胞が確認でき、構造的に見ても新生児の主細胞に非常に似ていることがわかった。
さらに、この胃組織は、消化酵素であるPepsinogenを培養液中に分泌し、ヒスタミン刺激に応答して酸を分泌し、培養液のpHを下げる能力を持つこともわかった。
以上より、ES細胞から作製した胃組織は、胃の機能の一部である消化酵素の分泌とヒスタミン刺激による胃酸の分泌を行い、試験管内でも胃の機能の一部が再現されていることが確認できた。
今後、薬の安全性試験や病態モデル作製等の創薬基盤研究への応用が期待できる。
(画像はニュースリリースより)

筑波大学 ニュースリリース
http://www.tsukuba.ac.jp/attention-research/r201509241200.html