生体への薬剤作用機構解明へ新たな手法
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・寺田純雄教授と川岸将彦助教の研究グループは、東京農工大学大学院工学研究院・三沢和彦教授ら、ワイヤード株式会社との共同研究で、固定したマウス眼球角膜に投与した低分子化合物の濃度分布測定に成功した。
背景
医療現場で使用される薬剤や、基礎科学研究において使用される低分子生理活性物質の、分子レベルの作用機構を解明する上で、その物質が機能を発揮する際に、細胞内のどこでどのように存在しているかが重要な情報となる。
現在、薬剤の局在、動態を調べる方法は各種存在するが、抽出や合成が困難、長い測定時間が必要、比較的容易な測定法も感度不足など、低分子化合物の局在を感度よく、かつ刻々と変化していく様子を、時間を追って測定する方法は確立していない。目印なしで特定の低分子化合物が生体組織内のどこにどの程度分布するか、検出する方法の実現が望まれてきた。
研究成果と今後への期待
今回の研究では、位相制御コヒーレントラマン顕微鏡のプロトタイプ機を利用し、時間分解法と組み合わせることにより、従来は困難だった低周波数領域の分子振動スペクトルを高感度で検出することが可能になった。
生体組織内での低分子化合物薬剤測定のモデルケースとして、市販の眼科用薬などに比較的多く添加されるアミノ酸類似化合物であるタウリンを使用し、マウス眼球角膜中のタウリン濃度分布を検出することに成功した。
今回の研究により、低分子化合物の濃度分布を、組織内でそのまま測定する新しい方法を開発し、薬剤が生体組織内で局所的に存在する様子を測定する方法への道が開かれた。このことで、将来的に、薬剤の作用機構の解明と新しい治療薬開発への応用が期待できる。
(画像はプレスリリースより)

東京医科歯科大学 プレスリリース
http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou