開発・審査を促進
中外製薬株式会社は、2015年9月4日、開発中の新規血友病A治療薬「ACE910」が、米国食品医薬品局(FDA)の画期的治療薬に指定されたと発表した。
画期的治療薬指定とは、重篤あるいは致命的な疾患や症状を対象とする薬を画期的治療薬指定して、その開発と審査を促進する制度で、2012年7月に施行されたもの。
同社は、アレクチニブ(クリゾチニブ投与後に病勢が進行したALK陽性の非小細胞肺がん)、トシリズマブ(全身性強皮症)で指定を受けている。今回は、「12歳以上で血液凝固第VIII因子のインヒビターを保有する血友病A患者に対する予防投与療法」として指定された。
臨床試験を実施
血友病Aは血液凝固反応が正常に働かないために、反復して重篤な出血症状が現れる疾患。血液凝固第VIII因子の欠乏または機能異常が原因で、血液凝固第VIIII因子製剤の静脈投与で出血傾向を抑制する定期補充療法を行う。ただし、第VIII因子製剤に中和抗体(インヒビター)を生じると、治療の効果が損なわれる。
バイスペシフィック抗体の「ACE910」は、同社独自の抗体技術で第VIII因子の機能を代替する新たなコンセプトで創製された。第IXa因子で第X因子を活性化し第VIII因子の活性を補うが、分子構造が第VIII因子と異なるため、インヒビターに影響されずに出血抑制効果を発揮すると考えられる。
現在、国内の第I/II相臨床試験で皮下投与を週1回行い、「ACE910」の安全性と定期投与の有効性を検討している。同社は2014年、F.ホフマン・ラ・ロシュ社に日本、台湾、韓国以外の地域の開発権を導出した。
今後は、ロシュ社と、2015年にインヒビター保有患者を対象に、2016年にインヒビター非保有患者を対象に第III相国際共同治験に着手し、2016年には小児の血友病A患者対象の開発試験も行う予定だ。

中外製薬株式会社 プレスリリース
http://www.chugai-pharm.co.jp/