新規治療標的の分子学的特徴を解明
2015年8月11日、国立研究開発法人国立がん研究センター(以下、国がん)は、新たな治療標的となりうる新規ゲノム異常や発生部位(肝内及び肝外胆管、胆のう)ごとの特徴を明らかにしたとの発表を行った。また、遺伝子発現データから予後不良群を同定し、同群で免疫チェックポイント療法が有効である可能性を報告した。
胆道がん(肝内及び肝外胆管がん、胆のうがんの総称)は日本を始めアジアで多いがんだが、近年は欧米でも増加傾向にある。しかし、分子標的薬を含めてこれまで有効な治療法が確立しておらず、日本における5年生存率は20%以下と膵がんに続き予後不良ながんである。
研究内容と結果
今回の研究では、胆道がんにおける治療標的の同定とそれを起点とした新たな治療法の開発を目指し、世界最大規模となる、肝内胆管がん145例、肝外胆管がん86例、胆のうがん29例を対象として、ゲノム(DNA)及びトランスクリプトーム(RNA)解読を行った。
この結果、胆道がんにおけるゲノム異常の全貌が明らかになり、薬剤臨床開発において、発生部位ごとにがんの発生メカニズムが異なっていることを考慮に入れた開発の必要性を見出した。
免疫チェックポイントに対する期待
免疫チェックポイントは、がんが免疫細胞の機能を抑制し、宿主免疫細胞による攻撃から逃れる機構としても知られ、最近では免疫チェックポイント阻害薬ががんに対する治療として世界的に注目されている。
既に免疫チェックポイント阻害薬は大規模臨床試験においてメラノーマや肺がんに対する有効性が示されており、他のがん種に対しても現在、精力的に開発が進められているところである。
今回の研究結果から、一部の胆道がんにおいても免疫チェックポイント阻害薬に反応する可能性が示唆され、今後、胆道がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の開発推進が期待される。
(画像はプレスリリースより)

国立研究開発法人国立がん研究センター プレスリリース
http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20150811