機能性ディスペプシアの新しい治療へ
2015年8月6日、大阪市立大学医学研究科消化器内科学・富永和作准教授らの研究グループは、国立研究開発法人理化学研究所との共同研究により、機能性ディスペプシア患者において脳内セロトニントランスポーター結合能に差異が認められ、その結合能とディスペプシア症状に相関性があることを明らかにしたと発表した。
背景
現在、日本において機能性ディスペプシアに対して保険承認が得られているのは、アコチアミドのみであり、消化管において平滑筋収縮運動を来す際の最終刺激産物であるアセチルコリンの代謝を阻害することにより、運動機能亢進を促す薬剤である。しかし、候補薬剤の少なさから、患者管理・治療に苦慮しているのが現状だ。
また、心理社会的要因が強く関与するとの見地から、抑うつや不安につながる身体的・精神的ストレス、自律神経系との関連性も示されてきた。しかし、これら個別の評価のみでは発症原因を説明することが困難な慢性疾患であるとも認識されている。
研究結果と今後への期待
今回の研究は、9名の機能性ディスペプシア患者、8名の健常者のもと、ディスペプシア・抑うつ・不安症状について質問紙にて調査し、PET検査を用いて脳内各領域におけるセロトニントランスポーターの結合能について、定量性解析を行った。
機能性ディスペプシア患者における機能障害の中に、中枢と末梢を橋渡しする中脳・視床において、両者の共通の神経伝達物質であるセロトニンの調節をつかさどるセロトニントランスポーターの変調があることが判明した。
中脳・視床でのセロトニン調節機構の変調は、ディスペプシア症状の増幅や下行性の痛み刺激の抑制不全、末梢運動機能障害の起因となる可能性が想定される。今後、機能性ディスペプシア患者に対し、既存の消化器病薬以外の、中枢あるいは神経伝達系に作用する薬剤など、新たな治療戦略開発につながる可能性が示唆された。
(画像はプレスリリースより)

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