大規模高齢者コホート研究
2015年8月4日、慶應義塾大学医学部・百寿総合研究センター新井康通専任講師、広瀬信義特別招聘教授と英国のニューカッスル大学のThomas von Zglinicki教授を中心とする研究チームは、テロメア長及び炎症が長寿メカニズムに関連していることを発表した。
マウスによる研究によって炎症が老化を促進する要因であることが証明されたのはごく最近のことである。医学の進歩により人類の寿命は延びているが、身体的にも認知的にも自立し健康であることが重要であり、老化原因の解明が急がれている。
研究内容
研究チームは、百寿者(100歳以上105歳未満)、超百寿者(105歳以上110歳未満)、スーパーセンチナリアン(110歳以上)とその家族、及び85~99歳の高齢者からなる、1,554名を対象とする大規模高齢者コホート研究を実施した。
長寿に関連性があると考えられる、5種類の各領域のバイオマーカーを分析した結果、百寿者とその家族で、テロメア長と炎症の2つの領域における特徴の一致を発見した。
加齢に伴い短縮するテロメア長は、百寿者や遺伝的に百歳に到達する確率が高いと考えられる百寿者の直系子孫では、テロメア長がより長く保持されており、実年齢80歳代でも、60歳代の平均値に相当する長さを有していることが分かった。
また、加齢に伴い上昇する炎症マーカーも、百寿者の直系子孫では低く抑制されているとともに、長寿者の中でも特に炎症が低いグループは、認知機能と生活の自立をより長い期間維持していることも明らかになった。
今後への期待
現在利用できる抗炎症薬は、慢性炎症を長期的に抑制する場合、様々な副作用により使用が難しい。しかし、今回の成果を元に、より安全な代替薬が開発されれば、高齢者の生活の質を大きく改善する可能性がある。
さらに、老化に伴って炎症が起こる原因の解明、免疫機能や腸内環境、食事や栄養摂取との関連を解析することにより、新しい健康増進方法の開発が期待される。

慶應義塾大学 プレスリリース
http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2015/