幹細胞から胃を丸ごと作製
国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産総研」)創薬基盤研究部門・幹細胞工学研究グループ栗崎晃上級主任研究員、二宮直登研究員、浅島誠産総研名誉フェローは、筑波大学、埼玉医科大学と、マウスES細胞から、試験管内で胃の組織を丸ごと分化させる培養技術開発に成功したと発表した。
背景
近年ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞を利用して、再生医療が注目を集めている。また、ES細胞やiPS細胞は、患者数が限られた希少疾患の研究や薬の開発、薬の安全性試験技術の開発という分野での応用も期待されている。
しかし、これまでこのような多能性幹細胞を利用してすい臓、肝臓、腸などの組織へと分化させる方法の開発が進められているが、胃の組織へと分化させる技術は、分化過程の組織を適切に区別する方法が整備されていなかったことからほとんど開発が行われていなかった。
研究内容
今回、幹細胞から胃の組織細胞を試験管内で分化させる培養方法を考案し、特に、胃の組織への分化決定方法を開発した。2014年末、胃の十二指腸に近い幽門前庭部の作製方法が報告されているが、今回の技術によって、より上部の胃体部を含む胃全体を作製した。
この胃組織は消化酵素を分泌し、ヒスタミン刺激に応答して胃酸を分泌した。さらに、メネトリエ病(胃巨大皺壁症)様状態を作り出す遺伝子TGFαを分化させた胃の組織で発現させると、胃粘膜が異常に増殖した前がん状態を試験管内で作製できたことが確認された。
試験管内で作製したこの胃組織により、胃の治療薬研究や病態研究への貢献が期待される。
(画像は産総研「研究成果」より)

産業技術総合研究所 研究成果
<a href=" https://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2015/nr20150804/nr20150804.html " target="_blank"> https://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2015/nr20150804/</a>