カビが作り出す二次代謝物の生合成中間体から創薬へ
2015年8月6日、東北大学大学院薬学研究科は、同大大学院農学研究科、同大大学院医学系研究科、岩手医科大学と共同で、カビが作り出すポリケタイド化合物の生合成中間体を利用し、医薬品を開発する上で鍵となるシーズを創出するための新たなアプローチの提示を発表した。
背景と研究内容
2010年に上市された抗がん剤であるエリブリンが、海綿の成分ハリコンドリンBを元にして開発されたように、生物が作り出す二次代謝物である天然物は新規医薬品開発において再注目されている。天然物をベースとした新しいケミカルスペースの開拓が、新薬の開発においても重要な課題の1つとなっている。
ケタマカビは構造的に興味深いポリケタイド化合物を生産する。今回の研究で、これらの中間体の生合成に関わる遺伝子を麹カビにおいて、異種発現させる方法と単離した中間体を化学変換する方法を組み合わせた半合成的な過程により、天然物と類似した骨格を有する分子の多様性を飛躍的に拡大させることに成功した。
また、合成した化合物から、これまで治療薬がなかったアデノウイルスに対して抗ウイルス効果を発揮する化合物を見出した。本来の代謝過程において様々な構造へと変化する中間体は、新しいケミカルスペースの開拓に役立つことが証明された。
今後への期待
天然物生合成中間体の活用は、低迷している低分子医薬品における生物資源及びその成分の利用を活発にし、新規医薬品の開発に貢献する。
(画像はプレスリリースより)

東北大学 プレスリリース
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/