生理活性物質PGD2 マスト細胞の増加を抑制
東京大学大学院農学生命科学研究科の村田幸久准教授と中村達朗特任助教らの研究グループは、マスト細胞が大量に産生するプロスタグランジンD2(PGD2)と呼ばれる生理活性物質に、マスト細胞自身の数の増加を抑える働きがあることを発見した。
食物アレルギーは特に子供に多く発症し、症状の種類は多様で、ショックを起こして死に至る場合もある。日本で約120万人の患者がいるとされ、増加も止まらず、発症原因の解明や治療方法の開発が待たれている。
マスト細胞はアレルギー反応の原因となる免疫細胞であり、マスト細胞の腸における数の増加が、食物アレルギーの発症や進行に関与することが示唆されていた。今まで機序は不明だったが、解明され、マスト細胞の数の増加や活性を抑えることが可能となれば、食物アレルギーの根本的な治療法となる。
プロスタグランジンD2(PGD2)に着目
PGD2は細胞膜の脂質成分を、PGD2合成酵素が代謝することで産生される生理活性物質であるが、食物アレルギーに与える影響は分かっていなかった。
H-PGDS遺伝子欠損マウス(H-PGDS KO)を用いた実験により、マスト細胞が産生するPGD2が、食物抗原の刺激に対するマスト細胞自身の浸潤を抑え、食物アレルギー症状の悪化を防ぐブレーキとしての働きを持つことが証明された。
また、PGD2が産生できない消化管やマスト細胞では、マスト細胞の浸潤や増加を促進するStromal Derived Factor-1(SDF-1α)とMatrix metalloprotease-9(MMP-9)の発現や活性が上昇していることが分かった。
今後への期待
研究グループはマウスの食物アレルギーモデルを用いて、マスト細胞が産生するPGD2が、マスト細胞の浸潤を促進する分子の発現を抑制することで、食物抗原に反応したマスト細胞自身の増加を抑え、症状の悪化を防ぐ作用を持つことを初めて示した。
今後、PGD2を標的とした、食物アレルギーの根本治療への応用が期待される。
(画像はプレスリリースより)

東京大学大学院農学生命科学研究科 プレスリリース
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