潰瘍性大腸炎の新たな治療薬開発へ
大阪大学大学院医学系研究科・奥村龍特任研究員、竹田潔教授らのグループは、2016年3月31日、腸管上皮細胞に発現するLypd8蛋白質が有鞭毛の腸内細菌の侵入を抑制し、腸管炎症を抑えるメカニズムを明らかにしたことを発表した。
背景
潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患の原因の一つとして、腸管粘膜バリアの破綻が考えられる。粘膜バリアは腸管上皮に形成される感染防御機構であり、腸内細菌の大腸組織内への侵入を抑える働きをするが、その抑制機構は明確になっていない。
炎症性腸疾患の患者数は近年増加し続けており、中でも潰瘍性大腸炎は現状根治的治療法がなく、新しい治療法開発が急がれている。
研究成果
研究グループは大腸上皮細胞に特異的に高発現しているLypd8遺伝子に着目して研究を行った。
作製したLypd8欠損マウスを用いて研究を進めたところ、大腸内粘液層に大腸菌やプロテウス菌などの有鞭毛細菌の侵入が認められ、Lypd8が大腸管腔に常に分泌されることが明らかとなった。また、マウスと同様に大腸上皮に発現しているヒトにおいても、潰瘍性大腸炎の患者ではLypd8発現の著しい低下が観察された。
さらに、Lypd8はプロテウス菌の鞭毛に結合し、プロテウス菌の運動性を抑制することがわかった。今回の研究成果によって、今後、Lypd8蛋白質の補充療法など、粘膜バリア増強による潰瘍性大腸炎に対する新たな治療法開発が期待される。
(画像はプレスリリースより)

科学技術振興機構 プレスリリース
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20160331/index.html