糖尿病治療薬メトホルミン
2016年3月3日、横浜市立大学肝胆膵消化器病学・中島淳教授、日暮琢磨助教らの研究グループは、横浜市立大学附属病院、その他関連病院との共同研究によって、糖尿病などの治療で用いられる薬剤メトホルミンを内服すると、大腸ポリープ切除除去後の新規ポリープ発生が抑制されることを世界で初めて報告した。
背景
大腸がん早期発見のために、便潜血による健診や、内視鏡検査によるポリープ切除は大腸がんの死亡率を下げることが報告されているものの、ポリープ切除後の再発や、がんの発症などが課題となっている。
薬剤を用いて疾病を予防するという概念は「化学予防」と呼ばれる。化学予防薬に必要な条件としては、副作用の少なさ、作用機序が明らかなこと、服用しやすいこと、安価、の5つが挙げられる。
大腸がんに対して予防効果のある薬は存在するが、副作用の問題があり、予防法として確立していなかった。メトホルミンは前述の5つの条件を全て満たす薬剤であり、研究グループは、以前よりメトホルミンに注目して、ヒトの直腸に存在する前がん病変に対する、マーカーの減少などを報告してきた。
研究成果
研究グループは、内視鏡切除により大腸ポリープがない状態になった患者151人を対象にメトホルミン/プラセボによる試験を実施した。1年後の内視鏡検査で、大腸前がん病変である腺腫の新規発生・再発率はメトホルミン群32%、プラセボ群52%であり、メトホルミン服用によりポリープの再発が40%も低下するという結果を得た。
この結果により、メトホルミンが大腸がんの化学予防薬として有用である可能性が示された。大腸腺腫・がんを切除した患者はその後にも高確率で再発することが報告されており、そのような患者を対象に予防薬の内服をすることでより、内視鏡の負担や将来の疾病リスクを減らすことができる可能性がある。
(画像はプレスリリースより)

横浜市立大学 先端医科学研究センター プレスリリース
<a href=" http://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/res/nakajima_20160302.html" target="_blank"> http://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/res/nakajima_2016</a>