生体深部のがん治療に応用
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」)は、3月8日、優れた光発熱効果を示すナノコイル状の新素材を開発したと発表した。
この新素材は、培養したがん細胞へ添加しレーザー照射すると、6割以上の細胞が死滅するというもの。近赤外レーザーを用いた生体深部のがん治療に、応用が期待されるという。
第四の治療法、温熱療法
がんの三大療法は、手術療法と化学療法、そして放射線療法だが、さらに安全で患者への負担の少ない新たな治療法が切望されている。そこで第四の治療法として注目を集めているのが、光発熱効果を利用した温熱療法だ。
がん細胞は、正常細胞と比べて相対的に熱に弱い。温熱療法はこの性質を利用し、がん細胞近くで光発熱効果を発生し、ターゲットを死滅させる。この治療法の実用化のため、生体深部まで透過できる近赤外光を吸収し、少量でも効果的に発熱する安全な材料が望まれていた。
60%以上のがん細胞が死滅
今回開発された新素材は、有機ナノチューブの表面にポリドーパミンがコイル状に結合したもの。生体透過性の高い近赤外レーザーを照射すると、高効率で発熱する。同素材を、培養したがん細胞に少量添加した上でレーザー照射を行ったところ、60%以上の細胞が死滅したという。
なお,同研究の詳細は日本時間2月5日、ドイツ化学誌「Chemistry - A European Journal」にオンライン掲載されている。
(画像はプレスリリースより)

光照射で効率的に発熱するナノコイル状の新素材を開発 - 国立研究開発法人 産業技術総合研究所
http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/