すべてを比較し判明
うつ状態と躁状態、または軽躁状態を繰り返す躁うつ病(双極性障害)には、落ち込む時期の「うつ病エピソード」と、高揚する時期の「躁病エピソード」の間に「エピソード間欠期」がある。
(画像はプレスリリースより)
このエピソード間欠期に、うつ病エピソードまたは躁病エピソードを予防する「維持治療薬」について、すべてを比較した結果、リチウムが最も効くことを、九州大学の三浦智史助教・神庭重信教授らによる研究グループが明らかにした。
躁うつ病は、躁状態がある場合に「双極I型障害」、軽躁状態だけの場合は「双極II型障害」と呼ばれる。躁状態だけの人も、いずれうつ状態が出ることが多いため、双極性障害と診断される。
2剤以上を組み合わせ併用も
躁うつ病で躁状態がひどくなると、落ち着きがなくなり、妙にはしゃいだり、怒りっぽくなったり、判断力が低下して行動がエスカレートしたりする。
逆に、うつ期に入ると、気分が沈み抑うつ状態となる。一般に、うつ病は中高年に多いが、躁うつ病は若い人に多くみられる。再発率が高いのも特徴で、長期にわたる治療が必要だ。
治療の基本は、気分安定薬による維持療法。気分の浮き沈みを抑えることで、再発・再燃を予防する。1種類で効果が不十分な場合は、2剤以上を組み合わせて併用する。
双極性障害は100人に1人位の頻度で発症する病気で、誰でもなりうる「うつ病」とは違う。一度治っても、放っておくとほとんどの人が数年以内に再発し、ほぼ生涯にわたって予防療法が必要になる。
安全性への配慮も必要
九州大学の研究は、1970年から2012年までに行われた33の臨床試験(延べ参加者数6846人)で使用した、17種類の治療薬を比較したもの。躁うつ病の維持治療薬はたくさんの種類があるが、これまで全維持治療薬の比較研究は行われていなかった。
比較結果によると、リチウムは「すべての気分エピソード再発症例数」「躁病、軽躁病、混合エピソード再発症例数」「うつ病エピソード再発症例数」の有効性評価項目のすべてで「偽薬」より優れていた。
リチウムは、双極性障害の維持薬物に古くから用いられているが、依然として「第一選択薬」であることが分かった。リチウム以外の薬は、3つの評価項目中で1つ以上が偽薬と差がない、または信頼度が低かった。ただ、リチウムを使用する際は、安全性モニタリングを心がけるなどの配慮が必要だという。

九州大学
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