新種薬は約10年ぶり
フィルムやカメラ事業から、多角化を図っている富士フイルムホールディングスは、これまで培った技術が生かせる医療分野や化粧品、産業機材や光学機器など幅広い分野に進出している。
医薬品では、米メディベクターとともに、抗インフルエンザウイルス薬ファビピラビル(一般名)の米国における承認申請を、来年にも行う可能性がある。新種の抗インフルエンザ薬は約10年ぶりとなる。
20万種類を超える化合物ライブラリー
富士フイルムは、カメラのデジタル化に伴うフィルムの売り上げ減を補填(ほてん)するため2008年、医薬品メーカーの富山化学を買収し傘下に収めた。
写真フィルムと医薬品との間には、多くの技術的関連性がある。富士フイルムには20万種類を超える化合物ライブラリーがあり、多くは光や電子を選択的に吸収・反射する性質を持っており、医薬品に応用できると考えられるものが多い。
また、化合物を乳化し、フィルム内部に適切に分散するためのナノテクノロジーが、医薬品の有効成分を体内の目的部位に届ける技術に有効活用することができる。
米国防総省の助成で試験
ファビピラビルについて、富士フイルムの山田光一・医薬品事業部担当部長はインタビューで、米国でのファビピラビルの第3相試験に必要な患者1600人の半数余りを既に登録しており、両社が来年3月ごろ、試験を完了し、承認申請を行う計画としている。
日本においてファビピラビルは、季節性インフルエンザ向けとして承認されていないものの、米国では国防総省の助成で試験が行われている。
同省は昨年10月の発表資料で、軍関係者をインフルエンザの大流行から保護するため、ファビピラビルの開発を支援していると説明。米食品医薬品局(FDA)の承認を受ければ、富士フイルムが米国で販売する医薬品の第1号となる。

富士フイルム
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