治療困難な分化型甲状腺がんへの適応
2014年5月30日、バイエル ヘルスケア社とアムジェン社の子会社であるオニキス・ファーマシューティカル社は、経口キナーゼ阻害剤ネクサバール(一般名ソラフェニブ)が、分化型甲状腺がんの治療薬として欧州委員会から販売承認を取得したことを明らかにした。この発表は、バイエル ヘルスケア社のプレスリリースを、バイエル薬品工業株式会社が日本語に翻訳したもの。
甲状腺がんはもっとも頻度の高い内分泌性悪性腫瘍で、全世界で毎年約30万人が罹患し、約4万人が死亡している。甲状腺がんには乳頭がん、濾胞がん、低分化がん、未分化がん、髄様がん、悪性リンパ腫の6つがあり、このうち乳頭がん、濾胞がんおよび低分化がんは「分化型甲状腺がん」に分類され、全体の9割を占める。その多くは治療可能であるが、放射性ヨウ素治療抵抗性の局所進行または転移性の場合は治療が困難で、生存率も低い。
ネクサバールはオニキス・ファーマシューティカル社とバイエル社が共同開発した抗がん剤。非臨床試験では、腫瘍の増殖に重要となる細胞増殖や血管新生に関与するキナーゼに作用することで、抗がん効果を発揮することが示されている。
病勢進行までの時間を約2倍に
今回の承認は、第III相試験であるDECISION試験のデータに基づくもの。この試験では、化学療法や分子治療薬による治療歴のない放射性ヨウ素治療抵抗性の局所進行または転移性の分化型甲状腺がん患者417例をネクサバール群とプラセボ群に割り付けて比較した。その結果、ネクサバール群ではプラセボ群に比べ無増悪生存期間が有意に延長し、病勢進行または死亡リスクが低下した。
DECISION試験での治験調整医師であるマルタン・シュルンベルジェ氏(グスタフ・ルーシー研究所)は、下記のようにコメントしている。
「DECISION 試験において、ネクサバールはプラセボと比較して無増悪生存期間を有意に延長することが示され、放射性ヨウ素治療抵抗性の分化型甲状腺がんの患者さんにおける病勢進行までの時間が約2倍になりました。分化型甲状腺がんで放射性ヨウ素治療抵抗性の場合は治療がより難しく、生存率も低くなります。したがってこの疾患の患者さんにとって、ネクサバールは重要な新しい治療選択肢になります」
(プレスリリースより引用)

バイエルのネクサバール錠(ソラフェニブ)、分化型甲状腺がんの治療薬としてEUで承認を取得(バイエル薬品工業株式会社)
http://byl.bayer.co.jp/html/press_release/2014/news2014-06-06.pdf