iPS細胞を用いた肥大型心筋症の創薬にも開発が期待される
慶應義塾大学医学部は、肥大型心筋症をもつiPS細胞を作製すること、そして肥大型心筋症を悪化させる因子を同定させることに成功したことを2014年11月12日に発表した。今回の発表は慶應義塾大学医学部の湯浅慎介専任講師、福田恵一教授、田中敦史(大学院医学研究科博士課程)らの研究グループによって得られた成果に基づくものである。
今回の研究成果の概要について
肥大型心筋症は筋原線維を構成している遺伝子が変異することが原因だ。この遺伝性疾患の発生頻度は高いにもかかわらず、この病気を治療するための特異的方法は存在しなかった。
研究グループはその治療方法を開発する上で、まず第一に肥大型心筋症のiPS細胞から心筋細胞を作製することから始めた。そしてこの病気を有する患者由来の心筋細胞を詳しく調べたところ、筋原線維に配列の乱れがあることが判明した。
さらに研究を進め、その配列の乱れの原因を探ったところ、エンドセリン-1と呼ばれるホルモンが深く関与していることがわかった。このことから、エンドセリン受容体拮抗薬を投与することによって、心筋細胞における筋原線維が有する配列の乱れを改善することを発見したのである。
今回の発見によって直ちにエンドセリン受容体拮抗薬が肥大型心筋症に対する治療薬になるとはいえない。しかしながら、今後の更なる検討を要するものの、肥大型心筋症の特異的治療方法の開発に大きくつながる研究成果であるといえる。

慶應義塾大学 プレスリリース
http://www.keio.ac.jp/ja/